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無症候性のアルツハイマー

「無症候性のアルツハイマー病」が、最近テレビで放送され話題になりました。これは、死後脳の解剖で、明確な脳の萎縮が認められ、アルツハイマー病と診断される状態でも、日常生活に不自由を感じることなく生活できていた方がいる、という驚くべき報告です。アルツハイマー病は、認知機能の低下を主な症状として日常生活に障害を起こす疾患です。したがって、無症候性のアルツハイマー病というのは自己矛盾した用語といえます。

「無症候性のアルツハイマー病」という現象が、初めて見出されたのはアメリカの修道院での研究です。そこで生活をされていた600名を超える修道女が献体をされ、生前の生活と死後脳の解剖調査研究が行われたことがきっかけです。生前、生き生きと献身的な生活を送られていた修道女の方の脳を解剖してみると、脳の神経細胞に障害を与えるアミロイドと言う物資がたまり、多くの老人班が形成され、脳が委縮してアルツハイマーの脳と診断される方が少なからずおられたのです。結果、生前の認知力のテストで、高得点を出していた人たちの三分の一の脳はアルツハイマーだったことが解りました。脳がアルツハイマーでも症状が出ない「アルツハイマー」になっても無症候性であるための、条件も解ってきました。

それは、広いライフスペースを保ち、豊かな社会的つながりを持つことです。積極的に多くの人と出会い、新しいことに挑戦することです。一般的に人との交流をあまり持たず、家から出ることがまれだと呆けの症状がすぐに表れるようです。また、若い頃から言葉が豊富なこと、表現力が豊かな人は呆けにくいことも修道女の日記の分析で明らかにされています。

精神の首座である脳の可能性、可塑性、柔軟性を感じます。「無症候性のアルツハイマー」が示しているのは、認知症は生物学的な疾患のみでなく、心理的・社会的な要素が大きく関わっていることです。また、その発現を予防できることです。

ブックスクリニック東京・福岡
(もの忘れ・脳疲労外来)外来を担当
新 福 尚 隆

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